糸を紡ぎ、車を創る

2023年9月8日

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赤レンガの壁が時代を越えて語りかけるトヨタ産業技術記念館へ行ってきました。

ここはトヨタグループの発祥の地であり,大正時代の工場を産業遺産として保存しながら,近代日本の発展を支えた繊維機械と現代を開拓し続ける自動車技術の変遷を,本物の機械の動態展示や実演で体験できる博物館です。館内は繊維機械館と自動車館の二つのパビリオンに分かれており,それぞれに豊田佐吉と豊田喜一郎のモノづくりへの情熱と挑戦が息づいていました。

繊維機械館では,綿花から糸や布を作る工程を実際に見たり触ったりしながら学ぶことができました。初代・豊田佐吉が発明した環状織機や百年の時を刻む蒸気機関などが動態展示されており,その精巧さと美しさに感嘆しました。スタッフの方々もとても親切で,わかりやすく丁寧に説明してくれました。

繊維産業で培った機械技術が,後に自動車産業へと発展していくことを知り,トヨタグループの基礎を築いた豊田佐吉の先見の明に敬服しました。

自動車館では,トヨタ初の乗用車であるAA型乗用車や,現代のハイブリッドカーやパートナーロボットなど,トヨタの自動車づくりの誕生から最新技術までを一望することができました。特に印象的だったのは,メインボデーの仮付けを再現したテクノライブショーで,人間の手のように細やかに動くロボットが,車の四方を囲んで同時進行で溶接していく様子を見ることが出来,そのスピードと正確さに驚きました。

また,金属加工技術の実演では,鋳造や鍛造,切削などの工程を目の前で体感することができました。トヨタの自動車づくりには,数々の試行錯誤と革新があったことを実感しました。

トヨタ産業技術記念館は,単なる博物館以上の存在であると感じました。それは,過去から現在,そして未来へと続く「モノづくり」の精神を伝え,それを体験することで,訪れる者一人一人がその歴史の一部となり,また,その未来を創り出す一助となるからです。この博物館は,私たちがどのようにして今日の生活を享受できるようになったのか,その過程を理解するための重要な場所であり,それは私たちが未来を創り出すための貴重なヒントを与えてくれます。

 

三村(晃)