絵画と自然の調和
2023年1月28日
先日,ホキ美術館へ行ってきました。
日本初の写実絵画専門美術館で,2021年に逝去したホギメディカルの創業者である保木将夫によって収集された名品を公開するために開館しました。現在もコレクションは増え続けており,約500点に及ぶ写実絵画を収蔵し半年ごとに入れ替えて展示しています。
コレクションされている作家のほとんどは日本人であり,日本を代表する写実画家・森本草介の作品36点をはじめ,私の大好きな原雅幸氏や石黒賢一郎氏,塩谷亮氏など,約60名の作家の作品が収蔵されています。
建築美にも優れており,ギャラリー1の半分が約30mも空中に浮遊しているという驚異的な外観は,ポーラ美術館や東京スカイツリーを手掛けた日建設計の設計によるものです。
東西に約100mも延びるチューブ状の建物は,東の公園側には木々の間にギャラリーが飛び込むように発散し,西の住宅側には,周囲の景観と調和するように収束するという独創的な構成になっています。
美術館に入ると,まず目に入ってきたのは,色彩豊かな静物画の数々でした。花や果物,器や本など,日常に存在するものが,微細な部分まで緻密に描かれていました。光の反射や質感,影の濃淡など,写真と見紛うほどのリアリズムがありました。静物画の展示は,ガラス窓から射す自然光で照らされており,作品と空間が調和しているように感じました。
地下に降りると,人物画の展示がありました。森本草介や野田弘志など,日本の写実絵画の巨匠たちの作品が並んでいました。人物の表情や姿勢,服装や背景など,それぞれの作品には,画家の観察力や思想が込められていました。作品と鑑賞者の距離感も絶妙に設定されており,絵画に没入することができました。
展示照明は世界でも稀有な全館ほぼLED照明を採用しており,全部で7,300個もの光源が,まるで銀河のように輝いていました。
館内撮影禁止のため,“NIKKEI MESSE『カスタムライティング 照明器具から照明装置へ 「ホキ美術館」 | LED NEXT STAGE』”より引用
LEDの特徴は長寿命で紫外線を発しないことに加えて,調光しても色温度に変化が無いことです。
白色と暖色の2種類の色温度のLED照明を無数に混合し,それらを調光することで,作家ごとのアトリエの光環境に近づけているそうです。
写実絵画の奥深さをたっぷりと堪能できました。建物と展示と自然が見事に融合しており,美術館自体が一つの芸術作品のようでした。写実絵画は,現実を忠実に写すだけではなく,画家の感性や創造力を映し出すものだということを,ホキ美術館で感じることができました。
三村(晃)