歴史を纏い,未来を招く

2023年11月25日

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京都迎賓館へ行ってきました。

古都京都に佇む迎賓館は,日本の伝統美と格式高い粋を凝縮した,優美なる建築の極致です。洋の東西を融合させた迎賓館赤坂離宮とは一線を画す,現代和風建築の傑作としてその姿を現しています。“現代和風”とは,日本建築の長い歴史に培われた粋と美を,現代の建築技術と見事に融合させたものです。鉄骨やコンクリートといった現代の素材と最先端技術を駆使しつつも,内装には木や紙をふんだんに用い,日本固有の空間美を創出していました。

館内に足を踏み入れると,聚楽の間,夕映の間,藤の間,桐の間といった,それぞれに独自の意匠を持つ部屋が続きます。これらの部屋は,日本の伝統工芸の粋を集め,最上級のおもてなしを提供するために設計された空間です。

中でも私の心を捉えたのは桐の間です。

全長12メートルにも及ぶ漆塗りのテーブルは,鏡の如く庭園の緑や天井の装飾を映し出し,室内に豊かな景観を創り出していました。また,その漆黒は和風建築の軽やかさを引き締めるのにも一役買っていました。正座が苦手な方々にも寛ぎを提供するため,掘り炬燵式の配慮が施されていました。

畳は,中継ぎ表という伝統的な技法により,イグサの最良部分のみを選りすぐり,中央で繋ぎ合わせています。畳縁には,麻の本藍染が用いられ,日本の風土に根ざした美を表現しています。

座椅子の背もたれには,五七の桐の蒔絵が施され,桐の葉の一枚一枚に微妙な色合いの違いがあり,同じ模様の椅子は二つとして存在しません。

また,日本庭園の絶景には,心を奪われるほどの美しさがありました。

“庭屋一如”を体現する現代和風の庭園は,佐野藤右衛門をはじめとする京都の名工たちの手によって造り上げられました。

紅葉の季節に訪れたことで,その美しさは一層際立ち,庭園には燃えるような赤や深い朱色の葉が,静謐な池の水面に映り込み,秋風が吹き抜けると,舞い散る葉が石畳に穏やかなリズムを奏でます。一瞬の静寂の中で時間が止まったかのような錯覚に陥るほどでした。

日本の精神と魂に深く触れた今回の訪問は,その荘厳な景色と共に私の心に深く刻まれ,貴重な記憶となりそうです。

 

三村(晃)