日本の歴史を映す任天堂史

2024年10月31日

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今月オープンした「ニンテンドーミュージアム」へ行ってきました。
任天堂の歴史と革新の結晶を一堂に会したこのミュージアムは,外観こそかつての工場の重厚な佇まいを残しつつも,一歩内部に足を踏み入れると,色彩豊かな任天堂の世界が広がります。エントランスを抜けると,マリオやゼルダといったお馴染みのキャラクターたちが出迎え,瞬時に童心に帰らせてくれます。


エスカレーターを登ると,耳に届く音や目に映る光景がプレイヤーを異世界へと誘い,まるでマリオの土管を通ってワープしたかのような衝撃を与えられます。展示エリアには,1983年に発売されたファミリーコンピュータから最新のNintendo Switchまで,任天堂が生み出してきた数々の名作が展示されています。そこには決まった順路はなく,自由に好きな順番で見て回ることができます。展示フロアを探索していると,まるで任天堂の卓越したデザインを体感しているかのような感動がそこにあります。これらの展示物は,単なる懐古趣味にとどまらず,任天堂の技術革新とデザイン哲学を深く理解するための貴重な資料となっています。
展示では,キャプションがほとんどないにもかかわらず,同社が直面してきた数々の挑戦や危機を如実に物語っていました。例えば,ボードゲームなどの新たな分野への挑戦,Wii Uの失敗から得た教訓,そして経営難の危機を乗り越えてきた歴史などです。
135年の歴史を誇る任天堂は,常にテレビゲームだけを作ってきたわけではありません。花札から始まり,トランプカードやボードゲームなど,多岐にわたる商品群を展開してきました。任天堂の歴史を辿ると,いちはやく「新しい遊び」を創出する企業であったことが明白です。これらは,ゲームボーイの生みの親である横井軍平の独創的なアイディアによるもので,任天堂をさらにユニークな企業へと昇華させました。また,革新的なゲームパッドを搭載していたWii Uは,スマートフォンやタブレットの急速な普及により市場で苦戦し,任天堂に多大な損失をもたらしました。しかし,Wii Uのハードウェアやソフトウェアを任天堂の他のゲーム機と同じ空間に置いてみると,その存在の重要性に驚かされます。『スプラトゥーン』や『スーパーマリオメーカー』といった重要なフランチャイズがここから生まれ,テレビとWii U Gamepadの両方で遊べるというNintendo Switchに繋がる発想もここで誕生しました。また,Amiiboという新商品もこの時期にスタートしています。
このように,説明がなくとも,これまで発売された機器を一堂に展示することで,任天堂の涙ぐましい努力が表現されているのは驚嘆に値します。これらの展示を通じて,任天堂がいかにして現在の成功を築き上げてきたのか,その過程を深く理解することができました。
また展示の後には体験展示のコーナーがあり,8つの展示物を,入館証に付与されたコイン(別途追加購入は不可)を消費して体験できます。私はしぐれでんSPやウルトラハンドSPを楽しみました。


その他,花札に関するワークショップや,組み合わせが27万通り以上あるオリジナルハンバーガーをオーダーできるカフェ「はてなバーガー」なども楽しみました。
今回ミュージアムを訪れたことで,任天堂がいかにして世界中の人々に夢と希望を与え続けてきたのか,その軌跡を深く理解することができました。未来に向けて,任天堂がどのような新しい冒険を私たちに提供してくれるのか,期待に胸が膨らみます。

三村(晃)